相対立する2つ以上の意思表示の合致によって成立する法律行為を 契約といいます。
例えばAがBにAの所有する土地を2,000万円で売る契約をしました。Aは土地を売るという意思表示をし、Bは土地を買うという意思表示をしたことになります。これによって売買契約が成立し、AB間で土地の引き渡し、代金の支払いという債権関係が発生します。 先に行った意思表示を申し込み、 後の意思表示を承諾といいます。

●契約の成立
いつの時点で契約は成立するのでしょうか。意思表示をして、それが相手方に到達したときに効力が発生します。これは到達主義と呼びます。ただ隔地者間の契約については、民法では発信主義を採用しています。契約の成立には、当事者の申し込みと承諾の一致が必要です。契約書は作らなくても契約は成立します。
※到達主義とは、意思表示の効力発生の時点を、それが相手方に到達したときとする立法の立場。到達とは、郵便受けに配達される等、客観的に相手方がその意思表示を了知できる状態となることをいいます
※発信主義とは、意思表示の効力発生時期を意思表示が発信された時とする考え方
●同時履行の抗弁権
双務契約の当事者が、相手方が弁済期にある債務を提供するまでは、自分の債務を履行しないと主張することができます。これを同時履行の抗弁権といいます。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは拒むことはできません。
そして同時履行の抗弁権を有する場合は、履行期が過ぎても履行遅滞になりませんので、債務不履行責任は生じません。
※双務契約とは、売買、賃貸借、請負のように、当事者の双方が相互に対価的関係にある債務を負担する契約です。
●危険負担
双務契約は当事者双方が相互に対価的な債務を負担します。一方の債務が債務者の責めに帰することができない事由により、履行不能となって消滅した場合に、他方の債務が消滅するかどうかの問題をいいます。
例えば、Aは所有する家を2,500万円でBに売る契約をしたとします。Bに引き渡す前に家は落雷で火事になり、焼失してしまいました。この場合、BはAに家の購入代金を支払わなければならないでしょうか。売買契約で家を引き渡す義務を負っている売主A(債務者)の落ち度がなく、家を引き渡すことができなくなった場合です。引き渡すことができなくなった以上、Aの引き渡しは消滅しますが、代金を支払う義務を負っている買主Bは2,500万円を支払う義務をはたさなければならないでしょうか。これが危険負担ということです。どちらがリスクを負担するかということです。
民法では、特にAB間で特約を結んでいない限り、この危険負担は買主Bが負担するものと決まっています。これを債権者主義といいます。家は手に入らないけれども、代金は支払わなければなりません。これは一部の滅失(損傷)した場合でも同様です。逆にAが損失を負担することを債務者主義といいます。債務者主義が適用される例としては、建物建築請負契約があげられます。建物が完成し、引き渡し前に火事などで建物が滅失した場合、請負人は建物注文者に報酬を請求することはできません。
危険負担に関する規定は、当事者の合意によって排除できますから、当事者間で危険負担につき、債務者主義とする合意をすることは有効です。
●停止条件付き売買契約の場合
停止条件付きの売買契約の場合の危険負担はどうでしょうか。
例えば、AはBに家を売る条件として、Aが転勤が決まったら家を売りましょうということにしていました。ところが地震で家が倒壊し、滅失してしまいました。
この場合はAが転勤が決まる前、つまり契約の効果が生じる前ですから、危険負担は売主Aが負います。転勤が決まったとしても、Bは代金を支払わなくてもよいことになります。ただし、損傷(一部が壊れている)の場合は、買主が負担します。買主は損傷の修理代を全額支払わなければなりません。
●危険負担と債務不履行
債務の履行が不可能となる場合の問題が危険負担、債務者の責めに帰すべき事由によって不能となることが債務不履行です。類似していますが違いについて注意してください。
例えば、家の引き渡しの期日が過ぎているにも関わらず、売主が引き渡しをしないでいたところ、家が落雷の不可抗力によって滅失してしまいました。この場合は危険負担の問題ではなく、引き渡し期日に遅れたという債務不履行の問題になります。


次はLESSON41 契約の解除です。