●相続とは
人の死によってその財産上の権利義務を他の人が包括的に承継することです。民法では相続争いを防ぐために、誰がどのくらいの財産を相続できるかなどということが規定されています。宅建士試験では毎年出題されている重要ポイントです。
●相続人の順位と範囲
相続人になる人は、配偶者を除いて、順位が決められています。第1順位に該当する人が1人もいない場合は、第2順位の人が相続人になれます。第1順位と第2順位に該当する人がいない場合は、第3順位の人が相続人となります。

では相続人がいない場合はどうなるでしょうか。この場合に、相当と認めるときは、家庭裁判所は被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者(特別縁故者)の請求によって、これらの人々に清算後残存すべき相続財産の全部または一部を与えることができます。

●代襲相続
推定相続人である子または兄弟姉妹が、相続の開始以前に死亡したとき、または相続欠格もしくは、廃除により相続権を失ったとき、その者の子がその者に代わって相続することを代襲相続といいます。
例えば、父が死亡して相続が始まったとします。父には妻および子、長男・長女・次男がいましが、父の死亡前に長男はすでに死亡していました。
この場合は代襲相続という制度によって、長男の子(父からは孫)が代襲して相続人となります。
※相続欠格とは、本来ならば相続人となる者が不当な行為をしたために、法律上当然に相続資格を失うこと
※廃除とは、被相続人に対する虐待その他の著しい非行を理由に、遺留分を有する推定相続人をその地位から除外すること
●相続分
法律が定めている相続財産の相続人の取り分を法定相続分といいます。相続分は被相続人が遺言で指定したり、公平な第三者に遺言で指定を委託することができます。これを指定相続分といいます。被相続人が遺言を作らず、何も指定しなかったときは、法律が定めている法定相続分を適用します。
相続制度が一部改正になりました。トップページで確認してください。
配偶者と子が相続人のとき
配偶者[2分の1]、子[2分の1、複数の場合は人数分で割ります]
配偶者と直系尊属が相続人のとき
配偶者[3分の2]、直系尊属[3分の1]
配偶者と兄弟姉妹が相続人のとき
配偶者[4分の3]、兄弟姉妹[4分の1]
※子供が養子であっても、嫡出子の相続分と同じです

●相続の承認・放棄
相続にはさまざまな形があります。被相続人の権利義務のすべてを承認することを単純承認といいます。被相続人が借金も財産もある場合、財産がうわまったときは、そのプラス分の限度で借金を返済するという形で相続することを、限定承認といいます。相続人が複数のときは、全員が協力して行わなければなりません。相続の開始によって一応生じた相続の効力を、相続人が拒絶することを相続放棄といいます。各相続人が単独で行うことができます。
相続の承認・放棄の注意点
○相続人は自分のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に、相続について単純承認、限定承認、放棄のいずれかをいなければなりません。
○3カ月以内に何もしなかったときは、単純承認したことになります。(法定単純承認)
○相続放棄したときは、その子供が代襲相続をすることはありません。
●遺留分
一定の相続人が受けることを保証するために、遺産について法律上必ず留保されなければならないとされている一定割合を遺留分といいます。遺留分の保障を受ける者は、被相続人の配偶者と直系卑属および直系尊属に限られます。
※直系卑属とは子供、孫、直系尊属とは父母、祖父母がこれにあたります
例えば、被相続人は遺産7,000万円を残して亡くなりました。被相続人には妻、子供2人がいました。ところが被相続人は遺産すべてを愛人に贈る旨の遺言を書き残しました。この場合、妻と子供2人は全く遺産を相続できないのでしょうか。
民法では、残された妻子が路頭に迷うことがないように、遺留分が規定されています。妻、子供2人のそれぞれの遺留分は、妻は相続財産の2分の1、子供2人も相続財産の2分の1(2人で分ける)となります。

●遺留分の侵害、放棄
被相続人が遺産を全額、遺言で贈与した場合、妻子は取り分がなくなってしまいます。このような場合を遺留分の侵害といいます。ただ遺留分を侵害する遺言は、まったく無効になるわけではありません。相続人が遺留分を相続したいと思ったときは、取り戻しを請求できます。この権利を遺留分減殺請求権といいます。
遺留分の放棄とは、遺留分を与えられた相続人が被相続人の遺言などで遺留分が侵害されたとしても、遺留分減殺請求をしないという意思を表すことです。遺留分を相続開始前に放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。親族に無理やり放棄させられることを防止するためです。相続人の1人が遺留分を放棄しても、他の相続人の遺留分には影響しません。また遺留分を放棄しても、相続人になることはできます。
亡くなる方の最終意思を死後に実現するための制度を遺言といいます。遺言は滿15歳以上であれば、未成年でも単独で行うことができます。被保佐人、被補助人も行えます。成年被後見人は事理弁識能力を回復したときは、医師2人以上の立会いを条件に単独でできます。遺言はいつでも遺言の方式に従っていれば、全部または一部を撤回することができます。
遺言の方式は民法で厳格に定めています。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。法改正で自筆証書遺言の作成がより手軽になりました。全文を自筆で書きます。ただし、財産目録はワープロ、パソコンでの作成が可能になりました。
不動産登記事項証明書、通帳のコピーの添付もよくなりました。(財産目録には署名捺印が必要)家庭裁判所の検認が不要です。すぐに相続手続きができます。費用はかかりますが、数百円の印紙代のみです。法務局に預けられるになりました。法務局の遺言書保管官が審査時に形式をチェック、不備を指摘してくれます。そして第三者に内容を改ざんされる恐れがなくなります。今後の試験対策のためにも頭に入れておいてください。
相続は40年ぶりに大改正されました。ここでは相続の基本的な学習をしましたが、トップページで改正の一部を紹介しています。順次紹介しますので、試験直前にはチェックしてください。

次は区分所有法がテーマのLESSON49です。