宅建士英文タイトル

LESSON28 時効(2)

ここでは消滅時効、時効の援用・放棄・中断について学習します。

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●消滅時効
 貸したお金をずっと請求しないでいると、権利が消滅してしまいます。このように権利者が一定期間、権利を行使しないでいると権利が消滅することを、消滅時効といいます。
※所有権は取得時効で失うことがありますが、消滅時効で失うことはありません
▶︎消滅時効の期間
 消滅時効が成立するためにはどのくらいの期間が必要かは、権利の種類によって違います。

○債権の場合は、原則10年
個人どうしでの貸金債権など
○債権または所有権以外の財産権の場合は20年
地上権、永小作権、抵当権など
○短期消滅時効にかかる債権の場合は、3年、5年など
地代など
○判決で確定した権利の場合は10年


 ●消滅時効の起算点
 権利者が権利を行使できるにもかかわらず、長い期間、権利を行使しなかったことによって、成立する消滅時効。では時効期間を計算する最初の時点(起算点)はいつからでしょうか。民法では、消滅時効は権利を行使することができるときから、進行するとしています。消滅時効の起算点は、確定期限の場合、不確定期限の場合、期限の定めがない場合と、債権の種類によって違います。

○確定期限の場合
消滅時効の起算点は、期限が到来したとき
○不確定期限の場合
消滅時効の起算点は、期限が到来したとき
○期限の定めがない場合
消滅時効の起算点は、債権の成立・発生したとき

 具体例で解説します。
AはBに70万円の代金債権をもっています。
消滅時効の起算点

例1 Bは2019年10月31日に支払うとしました。確定期限のある場合です。
この場合は2019年10月31日が到来したときに、AはBに70万円支払ってくださいと主張できるようになります。起算点は2019年10月31日です。
例2 Bは父がなくなったら支払いますとしました。不確定期限のある場合です。
この場合はBの父がなくなったときに、AはBに70万円支払ってくださいと主張できるようになります。起算点はBの父がなくなったときです。
例3 AはBにいつでも70万円を支払ってくださいと主張できます。期限の定めがないときです。起算点は債権が成立したときです。 
 

●時効完成の効力
 時効は要件が満たされれば、効力が発生するわけではありません。時効の利益を受けたいのであれば、時効の援用が必要です。時効の援用とは、時効の利益を受ける旨の意思表示をいいます。援用することができる者は、時効によって直接に利益を受ける者とされています。
 例えば、債権の消滅時効の場合、債務者、その債権の担保として抵当権が設定されているときの物上保証人、第三取得者などです。
※物上保証人とは、他人の債務のために自分の所有する特定の財産(土地など)を担保に提供した者。債務を直接に負わず、責任が担保物の範囲に限定される点で保証人と異なりますが、求償権は保証人と同じく認められます。

 具体例で解説します。
AはBに70万円貸しました。貸金を確実に回収するために、AはBの土地に抵当権をつけました。しばらくして、Bは抵当権のついた土地をCに売却しました。 AはBへの返済の請求をしないまま、70万円の債権について、消滅時効の期間が満了しました。この場合、BもCも時効の援用ができます。Bが70万円を返さないときは、AはBがCに売却した土地を抵当権に基づいて、競売にかけることができます。するとCは土地を失うことになります。それでCに時効の援用が認められています。 

時効完成の効力

●時効利益の放棄
 時効の援用と同様に、時効の利益の放棄も当事者の自由ですが、注意する点があります。民法では、時効の利益はあらかじめ(時効期間満了前)放棄することはできません。これは強い立場にある債権者が、お金を借りるときに、放棄を強要するなどの場合があるからです。


●時効の中断
 民法は、請求、差押え、仮差押え、仮処分、承認の行為があれば、継続的な事実状態が絶たれ、権利関係は明確になり、中断事由とされます。簡単にいいますと、時効期間が振り出しに戻る、または一時停止するということです。さまざまな中断事由を解説します。
請求による中断
 請求には、法定中断事由の中の、裁判上の請求と裁判外の請求の2つに分類されます。訴えの提起によって、請求は中断しますが、訴えが却下、取り下げのときは中断しなかったことになります。そして催告は裁判外の請求になり、借金を返してください!などと催促することをいいます。催告して6カ月以内に、差押え、訴えの提起などの中断事由をしなければ、時効は中断しません。そして催告後、強い中断事由を行うと、催告をしたときに時効が中断します。

差押え等の中断
 債権者が権利を実現、保全するための手続きとして、差押え、仮差押え、仮処分があります。
承認による中断
 時効の利益を受けることができる者が、権利がない、権利があることを権利者に対して表示することをいいます。
 例えば、取得時効では、Aの土地をBは取得時効しているが、Aに自分の土地でないことを表示し、自分の方からそれを認めることです。


●時効の中断の効果
 時効の中断があると、いままで進行してきた時効期間がすべてなくなり、時効が完成するためには、ゼロから期間が経過しなければなりません。
 中断した時効は、中断事由の終了したときからさらに進行を始めます。裁判上の請求によって中断した時効は、裁判の確定したときからさらに進行を始めます。
●時効の効力発生時期
 民法では、時効の効力はその事実が開始された日(起算日)にさかのぼって発生します。
 例えば、Aの土地をBが時効取得した場合、その土地がBが占有を開始した時点からBのものであるということです。

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消滅時効は、お金を借りた人を保護してくれるわけではありません。返済を求めない人にも責任があることを教えてくれます。次はLESSON29 所有権について学習します。