宅建士英文タイトル

LESSON29 所有権

人が特定の物を法令制限内にて自由に使用、収益、処分できる権利を所有権といいます。
ここでは物権一般、物権の中の所有権について学習します。

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民法図

●物権と債権について
 所有権の学習の前に、物権と債権について少し解説したいと思います。財産的な権利には、物権と債権の2つに分類されます。
 物権とは、物に対する権利のことです。住宅を買ったなら、住宅の所有権を取得したことになります。債権は、人に対して一定の行為を請求できる権利のことです。車を借りたときは、借りた人は貸した人に対して使わせてくださいと請求することができます。
●所有権について
 所有権とは、人が特定の物を法令の制限内で自由に使用、収益、処分できる権利をいいます。自分の物は、自由に扱っていいんだということです。


 ●所有権と相隣関係
  お互いに隣り合っている土地の利用関係を円滑にするために、定められたのが相隣関係(そうりんかんけい)です。民法では、隣地どうしの調整を目的として、様々な規定を設けています。

公道に至るための他の土地の通行権
 土地が、他の土地に囲まれて、公道に通じない場合、その土地の所有者は公道に至るために、他の土地を通行する権利が認められています。池沼、河川、水路、海を渡らなければならないときも同じです。民法では、はじめから公道に通じない土地、これを袋地または無道路地といいますが、このような場合と、土地が分割されて袋地となった場合と、それぞれ規定しています。 
 


最初から袋地の場合
○袋地Cの所有者
 袋地の所有者は他の土地を通って公道に出る通行権が認められていますが、通行の場所と方法は必要かつ隣地への損害が最少となるようにしなければなりません。そして通路を開設することができます。もし、損害が生じたときは、償金(補償金)を支払う必要があります。

袋地

分割の袋地

分割または土地の一部譲渡による袋地の場合
○分割によって袋地になった所有者
袋地の所有者Cは他の分割された土地Dのみ、通行できます。袋地のCはDの土地に通路を開設することができます。この場合、損害が生じても、償金を支払う必要はありません。


隣地使用権
 隣地との境界やその近くで建物を建てたり、塀などを修繕したりする場合は、必要の範囲内で隣地を使用したり、隣家に立ち入ることができます。ただし隣家への立ち入りには、隣人の承諾がない限り、立ち入ることはできません。
その他の相隣関係
○建物は境界線から50㎝以上の距離をとらなければなりません。さらに境界線から1m未満の距離のところには、窓、縁側、ベランダを設けるときは、目隠しを設ける必要があります。

○境界線を越える竹木の枝は切除を求めることができます。竹木の根が境界線を越えたときは、相隣者は根を切ることができます。
○隣接地の所有者は、お互いに隣地から水が自然に流れてくるのを妨げてはいけません。
○境界には、境界標、囲障を設置することができます。費用はお互いに2分の1ずつ負担します。測量費用がかかる場合は、面積に応じてそれぞれ負担します。


 ●共有
 共有とは、共同所有のことで、何人かで1つの物を所有することです。例としては数人で別荘を買ったり、ヨットを買って所有する場合などがあげられます。

民法では、共有物に関するもめ事を防ぐために、共有に関する規定を設けています。 


●共有持分
 共有物には、所有権の割合があります。この所有権の割合を共有持分といいます。
 例えば、AとBとCが軽井沢に別荘を8,000万円で共同で買ったとします。Aは4,000万円、BとCは2,000万円づつ資金をだしました。一般的に考えると、Aは2分の1、BとCは4分の1づつ持っています。長い間、共有状態が続くと、持分の割合が不明になる場合がよくあります。

 そこで民法では、各共有者の持分は、平等と推定するとしました。そして共有者の1人が死亡したり、持分を放棄したり、処分した場合も、民法は下記のように定めています。
○共有者の1人が相続人なしで死亡または持分を放棄した場合は、その持分は他の共有者に帰属します。
○共有持分の譲渡等処分は、各共有者が単独で自由に行うことができます。
※共有物に関する管理費などの債権は、持分の譲渡人に対しても請求できます

共有

●共有物の使用
 民法では、共有物の全部について、各共有者は持分に応じた使用ができます。各自が持分の割合に応じて、全部を使用することができます。


●共有物の管理、処分
 別荘を修繕したり、不法占拠者への明渡請求などは、単独ですることができます。これは所有者全員の利益になるからです。ただし不法占拠者に対する損害賠償請求は持分の割合に限られます。現状維持のための保存行為は単独でしても良いということです。
 これとは反対に、全員でなければならない行為があります。別荘の売却や売買契約の解除、抵当権の設定、増改築を行うなどの変更行為は、全員の利益に影響を与えますので、全員でなければダメだということになります。別荘を利用したり、改良したりすることは、持分の過半数の賛成でできます。
※利用改良行為とは賃貸借契約を結んだり、解除する行為です。
※過半数とは、全体の半分を越える数


●共有物の費用、債権
 管理費などは持分に応じて負担します。共有者が1年以内にこの義務を果たさないときは、他の共有者は、相当な償金を払って、その共有者の持分を取得することができます。共有物に関して、他の共有者に債権を持っているときは、その共有者の持分を譲り受けた継承人に対しても請求ができます。

 
 共有はしばしば争いのもとになりやすいので、民法では共有関係を解消するために、共有物の分割を定めています。各共有者はいつでも自由に共有物の分割を請求できます。ただし5年の期間内であれば、分割しない契約をすることができます。この契約は更新できますが、その期間は5年を越えることはできません。
 共有物の分割は3つの方法があります。
1つ目○協議による分割
 共有者の間で協議して決定します。共有物をそのまま分割する現物分割。共有物を売却して、その代金を分割する。共有者の1人が共有物の所有権を取得して、他の共有者に金銭を支払う価格賠償。以上の方法があります。
2つ目○裁判所による分割 
 共有者の間で協議が整わない場合、裁判所に分割の請求をし、分割します。分割ができないとき、または分割で価格が著しく低下するときは、裁判所は共有物の競売を命ずることができます。競売代金は共有者で分配します。
3つ目○分割への参加
 共有物の権利を有する者および各共有者の債権者は、共有物の分割に参加することができます。分割に利害関係がある人々だからです。参加の請求に祭して、参加前に分割をしたときは、分割の効力は参加を請求した者に対抗できません。 


cowgirl
最近は迷惑な隣人がニュースなどに取り上げられています。なかなか法律だけでは解決しないのが現状です。次はLESSON30 物権変動について学習します。