宅建士英文タイトル

LESSON10 宅建業の営業保証金制度

消費者を保護するために、営業保証金制度があります。
宅建業者は業務を始める前に、供託所に決められたお金を預けなければなりません。
ここでは営業保証金制度について学習します

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営業保証取引図
●営業保証金
 営業保証金とは、宅建業者が取引で消費者に損害を与えた場合、それを担保するために供託所に預けるお金(供託金)・有価証券のことです。
※担保とは、債権の保証として、債権者に提供するもの
※供託所とは、供託金を保管する国の機関(法務局、地方法務局とそれらの支所・出張所)
▶︎営業保証金の供託
 宅建業者は、営業保証金を主たる事務所(本店)のもよりの供託所に預けなければなりません。そして営業保証金を供託したときは、供託書の写しを添付して、その旨を免許を受けた国土交通省または都道府県知事に届出をします。宅建業者はこの届出後に事業を開始することになります。また、事業開始後に、事務所を増設した場合は、その事務所(支店など)の所定の営業保証金を供託しなければなりません。(本店と同じところに供託します)期間の制限はありません。
▶︎営業保証金の金額と供託方法
 宅建業者は 本店(主たる事務所)については1,000万円、その他の事務所は(支店など)については事務所ごとに500万円を供託します。
例:本店1,000万円+支店500万円=供託金1,500万円 
 営業保証金は原則現金ですが、有価証券でも供託できます。主たる事務所(本店)のもよりの供託所に全部一括して供託します。有価証券は国債、地方債、その他国土交通令で定める有価証券です。ただし証券によって評価額が違います。
○国債証券は額面金額(100%)
○地方債証券、政府保証債権は額面金額の90%
○その他国土交通令で定める有価証券は額面金額の80%
とそれぞれ上記のようになりますので、注意が必要です。
※株券、手形、小切手は対象になりません。
▶︎宅建業者が営業保証金を供託しない場合
 免許を取得したのに、いつまでも営業保証金を供託しない宅建業者がいます。このような場合、宅建業法では催告や免許取消ができるように定めています。
○宅建業者が 免許を受けた日から3カ月以内に営業保証金を供託したことを届出ない場合は、国土交通大臣・都道府県知事は届出をするように 催告をしなければなりません。この催告が 宅建業者に届いた日から1カ月以内に届出がない場合は、 免許を取り消すことができます。
※催告とは、ここでは宅建業者に、営業保証金を供託し、供託したことを届出するように催促すること。
※催告は必ずしなければなりません。免許取消はできますが、任意です。

 ●営業保証金の還付
 宅建業者が供託しているお金を、取引した消費者のために使われることを還付といいます。宅建業者と取引したものが損害を受けたときは、それを証明して、営業保証金の中から、損害弁済を受けることができます。
 宅地建物の購入者、媒介、代理を依頼した者などは還付請求できます。ただし、従業員の給与債権、広告会社の広告代金などは還付請求できません。 

  還付により、営業保証金が不足したときは、免許権者から不足の通知を受けます。その通知を受けた日から2週間以内に宅建業者は不足額を供託しなければなりません。そして不足額を供託した日から2週間以内に、供託書の写しを添付して、免許権者に届出をする必要があります。
※免許権者とは、宅建業者に免許を与えた国土交通省または都道府県知事


 ●営業保証金の保管替え
 宅建業者が本店などを移転したとき、もよりの供託所でなくなることがあります。その場合は営業保証金を預けている供託所を変更する必要があります。
その方法は2つあります。
 
 一つは現金で供託している場合です。移転後、遅滞なく費用を予納して、営業保証金を供託している供託所に、移転後のもよりの供託所への保管替えを請求しなければなりません。
 もう一つは有価証券のみと、金銭と有価証券の両方で供託している場合です。本店を新しいところへ移転後、遅滞なく営業保証金を、移転したところのもよりの供託所へ供託する必要があります。そして、移転前の供託所に預けていた営業保証金は、新しい供託所に営業保証金を供託後に、取り戻すことができます。

保管替え
 
保管替え1

●営業保証金の取り戻し
 宅建業者が営業保証金(供託金)を供託所から返してもらう場合があります。これを取り戻しといいます。では、どのようなときに、取り戻しができるのでしょうか。取り戻しには全額と一部の場合があります。
▶︎全額取り戻しの事由
○宅建業者としての業務ができなくなったとき
 ・免許の更新をしないで、有効期間が満了したとき
 ・免許取消処分を受けたとき
 ・死亡、合併によって消滅したとき
 ・破産、解散、廃業の届出があり、免許の効力がなくなったとき
○営業保証金を供託している宅建業者が、主たる事務所(本店)移転のため、新たに営業保証金を供託したとき
○宅建業者が宅地建物取引業保証協会(詳しくはLESSON11で学習します)に加入し、保証協会が弁済業務保証金を供託したとき
▶︎一部取り戻しの事由
○宅建業者が事務所を一部廃止して、供託している金額が政令で決められている金額より多くなったとき

石の上ガエル

● 営業保証金取り戻しの手続き
 宅建業者は、営業保証金をすぐ取り戻せるわけではありません。供託所からお金を引き上げてしまうと、何も問題がなければ良いですが、取引先(お客)が困ることがあります。宅建業法では、原則として還付請求権者(お客)に6カ月以上の期間は、申し出る機会をあたえるように公告します。そしてその期間中に申し出がないときは、宅建業者は取り戻しが出来るようにしました。
※公告は、官報に所定の事項を掲載して行います。  
 ただし、例外があります。公告する必要がなく、宅建業者がすぐ取り戻しが出来る場合です。
○有価証券と現金の両方を営業保証金として供託している場合、本店が移転によって供託所が変わり、移転先のもよりの供託所に新たに供託し、旧本店の供託所から取り戻すときは、すでに二重供託になりますので、すぐ取り戻しができます。
宅地建物取引業保証協会に加入し、営業保証金の供託が必要なくなったときは、債権者(お客)は保証協会の弁済業務保証金から還付を受けることができますので、すぐ取り戻しができます。
○取り戻し事由が出てきてから、10年が経過したときは、債権の消滅時効が原則10年ですから、すぐ取り戻しができます。