宅建士英文タイトル

LESSON42  売買

もっとも日常的に行われる契約が売買です。
宅建士試験では、土地・建物の売買が中心ですが
民法では、缶コーヒーを買うことと、家を買うことの区別はありません。

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●売買
 当事者の一方(売主)がある財産権を相手方(買主)に移転することを約束し、相手方(買主)がこれに対してその代金を支払うことを約束する契約を売買といいます。買い物にはこんな法的な事柄が存在していたんです。


●手付(てつけ)
 売買、請負、賃貸借などの契約締結の際、履行の保証として当事者の一方から他方へ交付される金銭などを手付といいます。手付は契約成立の証拠であり、解約の場合の没収金の目的でもあります。不動産の売買契約では、代金の5%から10%の手付が買主から売主に渡されます。
 手付には交付の目的によって、解約手付、違約手付、証約手付の3種類があります。

○解約手付とは、手付を交付することで契約を解除できるようにしたものです。
○違約手付とは、債務不履行があった場合に、手付を没収する趣旨で交付されるものです。
○証約手付とは、売買契約成立の証拠として交付されるものです。
 当事者が手付を交付したけれど、どの種類の手付か定めなかったときは、民法では解約手付と推定されます。
 解約手付の場合は、買主は手付の放棄により、売主は手付の倍返しにより、契約を解除できるとしています。相手方の債務不履行は関係ありません。また、手付の解除には時期的制限があります。相手方が契約の履行に着手した後は、解約手付による解除はできません。自分の方が履行に着手していても、相手方がまだ履行していないときは解除できます。
 

具体例を2つあげて解説します。

例1
 AはBに家を3,000万円で売る契約をし、Bから手付金300万円を受け取りました。ところがCが現われ、Aの家を4,500万円で買いたいと申し込んできました。Bとの契約を解除する場合は、Aは倍返しとして手付金300万円の2倍600万円をBに渡すことになります。
売買契約1
例2
 AはBに家を3,000万円で売る契約をし、Bから手付金300万円を受け取りました。ところがAの家より価格の安い2,000万円でDの家が売り出されました。Bは手付金300万円を放棄して、Aとの契約を解除し、Dの家を購入することができました。
 
売買契約2
解約手付のポイント

●売主の担保責任
 家は高額な買物です。それが欠陥住宅であった場合、買主は売主に対して責任を追及することができます。売主が追う責任を、 売主の担保責任といいます。宅建士試験でよく出題される重要分野です。
 担保責任は、売主に欠陥があることについて故意や過失がない場合でも認められる責任です。この責任を 無過失責任といいます。
 民法の規定で、売主の担保責任には、6種類あります。
1○瑕疵担保責任、2○全部他人物売買の担保責任、3○一部他人物売買の担保責任、4○数量指示売買の担保責任、5○担保物権がある場合の担保責任、6○用役権(地上権等)がある場合の担保責任の6種類です。
 順に解説します。

1○瑕疵担保責任
 売買の目的物に 隠れた瑕疵があったときに売主が追う担保責任を 瑕疵担保責任といいます。隠れた瑕疵の存在を知らなかった買主は、売主に対して 損害賠償請求ができ、また瑕疵のために目的を達成することができないときは、 契約を解除することができます。しかし、これらの権利の行使は、 瑕疵を知ったときから1年以内にしなければなりません。
瑕疵担保責任
 瑕疵担保責任における買主は、 善意かつ無過失でなければなりません。土地の売買契約の場合、法令上の制限があり、その土地に建物が建てることができないような場合も、瑕疵があるとしています。また、買主の売主に対する瑕疵担保責任による損害賠償請求権は、買主が家などの目的物の 引渡しを受けたときから、10年で時効によって消滅します。
※隠れた瑕疵とは、通常の注意を払っても発見できないような欠陥をいいます。

2○全部他人物売買の担保責任
 全部他人物売買とは、 権利の全部が他人に属している場合の売買のことをいいます。このような売買契約は有効とされています。 
全部他人物売買
 例えば、ある土地について売主A、買主Bとの間で売買契約が成立しました。ところが、土地の所有者はCでした。AがBに土地を移転できない場合、Aはどんな担保責任を負うでしょうか。
 判例によりますと、Cは当初から土地を売る意思がなかったとしても、AとBの売買契約は有効であるとされています。AがBに土地を引き渡すことができないときは、Bの保護のため、売主Aの担保責任が認められています。買主Bは善意であれば契約の解除ができ、損害賠償の請求が可能です。悪意のときは、契約の解除だけ認められています。行使期間の制限はありません。そして売主AがCの土地であることを知らなかった場合、善意の売主を保護するために、解除権が認められています。

3○一部他人物売買の担保責任
 一部他人物売買とは、売買の目的物の一部が売主以外の他人が所有する場合をいいます。
 例えば、売主Aと買主Bとの間で土地300㎡の売買契約が成立しました。ところが、土地の一部100㎡がAの所有ではなく、Cのものでした。AがCの所有分もBに移転できなかった場合は、買主Bは善意、悪意を問わず代金減額請求ができます。また買主は善意の場合、損害賠償請求、さらに買った目的を達成できない場合は、契約の解除ができます。そして買主が悪意の場合は、代金の減額請求のみすることができます。行使期間制限は、一部他人物売買の場合は1年以内になります。善意の場合は知ってから1年、悪意の場合は契約から1年となります。
一部他人物売買

4○数量指示売買の担保責任
 売主が売買の目的物について一定の数量を表示し、かつその数量を基礎として、割合的に代金が決定された売買契約を数量指示売買といいます。
 例えば、AがBに土地を売るとき、1㎡当たり5万円とし、全部で120㎡あるので代金は600万円となりました。ところが実測したところ90㎡しかありませんでした。売主はどんな担保責任を負うでしょうか。
 数量が不足しているときに生じる担保責任です。当然買主は代金減額請求ができます。そして善意の買主に限り、売主に損害賠償請求ができます。また、買った目的を達成できないときは、契約の解除もできます。権利行使期間は、善意の買主は事実を知ったときから1年以内、悪意の買主は数量不足を知りながら買ったわけですから、減額請求は認められません。

5○担保物権がある場合の担保責任
 ここでは抵当権が設定されている不動産が売却された場合の法律関係、特に担保責任について具体例で解説します。
 AはBに1,000万円を貸し、担保であるBの土地に抵当権をつけました。Bは自分の土地をCに売却したいのですが、売却できるでしょうか。また売却したときは法的な問題は生じないのでしょうか。
 Bが借金1,000万円を返済しないとき、Aは抵当権を実行して、土地を競売にかけることができます。そして競落したDが競売代金をAに支払います。Aは他の債権者に優先して自分の債権を回収できます。
 Aは抵当権の設定登記があれば、土地の抵当権を実行でき、貸金回収ができますので、 BはAの承諾を得ることなく抵当権つきの土地をCに売ることができます。
 ただ買主はAに抵当権を実行されてしまうと、土地の所有権を失うことになります。そこで民法ではこのような場合、次のような規定をしました。
○買主CはAが抵当権の行使によって土地の所有権を失った場合、契約の解除および損害賠償をBに請求できます。
○買主Cが費用を支出して、土地の所有権を保存した場合には、費用の償還と損害賠償をBに請求できます。また買主Cは抵当権消滅請求の手続きが終わるまでは、代金の支払いを拒絶できます。
 いずれも買主Cの善意、悪意を問われません。担保責任の追及について行使期間の制限もありません。
担保物権のある場合

6○用益権(地役権等)がある場合の担保責任
 土地を買って家を建てようとしたが、他人のための地上権が設定されていて、買主が家を建てられない場合です。
 このように売買の目的が地上権、永小作権、留置権、または質権の目的となっている場合に、目的不動産に存在するとされた地役権が存在しない場合、買主に対抗できる賃借権が存在するとき、担保責任を追求できるのは、善意の買主に限られます。当然、売主に損害賠償請求、目的を達成できないときは、契約の解除ができます。権利行使期間は1年以内です。
※用益権とは、使用収益権の略として用いられ、また用益物権、賃借権等の使用収益権の源泉となる権利を指すこともあります 

 
 
 
 
image ピラミッド

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売主の担保責任は宅建試験ではよく出題される重要な分野です。
問題集は少しずつでも進めて、問題になれるようにしてください。
次はLESSON43 贈与・消費貸借等 です。