●贈与
友人から本をプレゼントされる。友人にCDをあげる。このような普段なにげなく行なっていることは贈与契約になります。ただで物をあげる、もらうという無償の契約です。成立には書面は不要です。
贈与契約の性質にはさまざまな特徴があります。
○書面によらない贈与の場合は、履行の終わったところを除いて、各当事者が撤回することができます。
○ただであげるものですから、担保責任を 負わないのが原則です。
注意が必要なのは、贈与者は瑕疵を知りながらこれを告知しなかったときは、責任を負うことです。もらう人も一定の負担を負う負担付贈与契約の場合は、贈与者は負担の限度で担保責任を負います。負担付贈与についてもう少し詳しく解説します。
例えば、AがBに土地を贈与することにしました。その見返りにBはAの老後の身の回り世話をするというような場合です。このように一定の負担を約束した贈与は、贈与者は一定の限度で担保責任を負います。
●消費貸借
当事者の一方(借主)が種類、品質、数量の同じ物をもって返還することを約束して相手方(借主)から金銭その他の代替物を受け取ることによって成立する契約を消費貸借といいます。
例えば、急に買いたいものがでてきたけれど、いま持ち合わせがないので、友人から借金する。料理に使うソースが切れていたので、隣人からソースを借りる。
このような契約をいいます。何月何日までに返しますと約束して、その日に返還すれば、問題ないのですが、返す時期を決めなかったときは、問題があります。民法では、このような場合、次のように定めています。
○返還時期を定めない消費貸借契約では、借主は相当の期間を定めて、返還の催告をすることができます。
○借主はいつでも返還することができます。

当事者の一方が他方に事務の処理を委託し、他方がこれを承諾することで成立する契約を 委任といいます。
例えば、不動産業者にアパートの賃貸借契約を依頼することや、土地の売買契約など、法律行為を依頼することなどのことをいいます。依頼者Aを 委任者、依頼を受ける人Bを 受任者といいます。委任契約を結ぶと依頼を受ける受任者と、依頼者である委任者には義務が課されます。それぞれの義務について解説します。

●受任者の義務
善管注意義務
受任者は善良な管理者として、注意をもって委任事務を処理しなければなりません。この義務を善管注意義務といいます。そして報酬のあるなしに関わらずこの義務は守らなければなりません。
報告義務
委任者の請求があるときは、受任者はいつでも委任事務の処理状況を報告し、委任事務終了後はすみやかに経過や結果を報告しなければなりません。
受取物引渡し義務
受任者は委任事務で受け取った金銭、物品等を委任者に引き渡さなければなりません。委任者のために受任者の名前で取引した権利も移転します。
金銭消費責任
受任者は委任者に渡すべき金銭を、自分のために流用したときは、利息をつけて渡します。損害があれば損害賠償もしなければなりません。
●受任者の権利
特約があれば報酬を請求できる
委任契約は原則として、無償ですから、報酬はありません。しかし、特約で報酬を請求できるとすれば、報酬はもらうことができます。報酬の支払いは、当事者間で定めていないときは後払いになります。
費用償還請求権・費用前払い請求権・損害賠償請求権
受任者が必要経費を立て替えた場合は、かかった費用に、支払いした日からの利息をつけて償還を請求できます。また、受任者から請求があったときは、委任者は前払いで受任者に支払います。
●委任の終了
委任は当事者の信頼関係で成り立っています。当然その関係が壊れると、各当事者はいつでも告知によって契約を解除できます。ただし相手方にとって不利な時期に解除した場合は、やむを得ない事情がある場合を除いて、損害賠償しなければなりません。また委任者の死亡、破産手続き開始決定、受任者の死亡、破産手続き開始決定、後見開始の審判により、委任契約は終了します。
●使用貸借
無償で物の貸し借りをする契約を使用貸借といいます。借主が貸主から目的物を受け取ることで成立します。貸主には修繕義務はなく、通常の必要費は借主が負担しますので、貸主には償還義務もありません。使用貸借は無償契約ですから、貸主は原則、担保責任は負いません。
ただし、瑕疵を知りながら貸主が借主に告げなかったときは、担保責任を負います。借主は使用貸借を終了したいときは、目的物を原状回復して返還しなければなりません。契約の終了は期間満了、借主・貸主の死亡によっても終了します。

次はLESSON44 不法行為 です。