さまざまな不法行為がありますが、大きく分類すると、 一般の不法行為と 特殊な不法行為になります。特殊な不法行為はさらに5つに分類されます。

●一般の不法行為
一般の不法行為とは、故意または過失によって、他人の権利や法律上保護される利益を違法に侵害し、損害を与える行為のことです。
例えば、車を運転していて不注意で人をはね、怪我をさせてしまった場合、過失で交通事故を起こし、人に怪我をさせ損害を与えたことになります。損害を与えた者は被害者救済の観点から、損害賠償義務を負います。そして加害者は精神的苦痛に対しても、賠償をする必要があります。これは慰謝料請求権といいます。これは普通の金銭債権になり、相続されます。
法人の場合も、名誉権が侵害され、金銭的な判断が可能な損害が生じたときは、加害者に対して慰謝料を請求することができます。
不法行為に基づく損害賠償債務は、被害者保護のために、損害の発生と同時に遅滞となります。
特殊な不法行為
●使用者責任
事業を行うために他人を使用する者は、被用者(従業員)がその事業を執行することについて、第三者(お客)に損害を加えた場合には、損害賠償責任を負います。これを使用者責任といいます。そして使用者が責任を負うこのような考え方を、報償責任といいます。
では、従業員が業務終了後に、会社の車を私用で運転中に人に怪我をさせた場合は、使用者は責任を問われるでしょうか。
法律では職務の範囲内でなかった場合でも、外形的に見て、客観的に職務の範囲内と考えられるときは、被害者が悪意重過失でなければ、使用者は責任を負うとされています。これはより広く被害者の救済をはかるためです。そして使用者が使用者責任を負うには、従業員に一般の不法行為が成立しなければなりません。使用者と従業員(被用者)は被害者に対して、不真正連帯債務を負い、両者は全額賠償する責任を負います。
※不真正連帯債務とは、数人の債務者が同一の内容の給付を目的とする債務を、それぞれ別個の原因によって負担することで、各人がその給付の全てを履行する義務を負うが、一人が履行すれば他の債務者の債務も消滅する関係。債務者間に主観的共同関係がなく、一人の債務に生じた理由は他の債務者に影響を及ぼさない
使用者は普段から被用者の選任監督について相当の注意を払っていたにもかかわらず、損害が生じたと考えられるときは、使用者は責任を負いません。
使用者が被害者に損害賠償金を支払った場合は、被用者に求償することができます。ただし、求償は信義則上相当な限度にかぎられます。
被用者の不法行為責任は、使用者責任が成立してもまぬがれないことに注意してください。被害者は使用者にも被用者にも損害賠償請求できます。
※信義則とは、人の社会共同生活は、相互の信頼と誠実な行動によって円滑に営まれるべきである、との考えに基づき、権利義務という法律関係の履行についても同様の行動をとることを求める法理
●共同不法行為
複数の者が共同で不法行為によって他人に損害を与えることを共同不法行為といいます。
例えば、売主Aは宅建業者B・Dは共同して不法行為を行ない、売主Aが損害を被りました。売主Aは誰に損害賠償請求できるでしょうか。
宅建業者B・Dは共同不法行為をしたのですから、連帯で責任を負わなければなりません。AはBだけでなくDに対しても損害賠償請求ができます。ただし、この場合は不真正連帯債務とし、債務者(共同不法行為者)の一人であるBに生じた事由(請求等)は、弁済を除き、原則、他の債務者Dに影響を及ぼしません。
●工作物責任
建物その他土地の工作物(塀、橋、トンネルのように土地に接着して築造された設備など)の設置や保存に瑕疵があり、そのため他人に損害を生じさせたときに、その工作物の占有者はまたは所有者が被害者に対して負う責任を工作物責任といいます。
例えば、たまたま家の前を通行している人が、家の壁がはがれ落ちて怪我をしました。この場合、誰が損害賠償をしなければならないのでしょうか。
まず第一にこの家に住んでいる人(借家人もあてはまります)が責任を負うことになります。ただし借家人などの占有者が相当な注意を払っていたときは、占有者は責任を負わず、所有者が責任を負うことになります。この所有者の責任は、最終的なもので、自分に過失がなくても負う思い責任です。(無過失責任)
●注文者の不法行為責任
注文者は請負人が誰かに損害を与えたときでも、損害を賠償しなくてよいと、民法では規定しています。ただし、請負人にした注文や指示について、注文者に過失があるときは、注文者が責任を負います。
●不法行為による損害賠償請求権の期間の制限
ここは重要ポイントです。不法行為による損害賠償請求権は時効期間を定めています。被害者または被害者の親など(法定代理人)が損害および加害者を知ったときから3年間行使しなければ、時効によって消滅します。不法行為のときから20年間経過したときも同様に時効によって消滅します。

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