宅建士英文タイトル

LESSON45  賃貸借

大家がアパートを貸して、アパートを借りた人から賃料をもらったり、
転貸して収益を得ることは日常的に行われています。
ここでは賃貸借契約について学習します。

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●賃貸借
 賃貸人が賃借人にある物を使用収益させ、これに賃借人が使用収益の対価を支払う契約を賃貸借といいます。賃貸借は当事者間の合意だけで成立します。物の引き渡し、契約書の作成、その他特別な様式は不要です。
 賃貸借契約を結ぶと、賃貸人には使用・収益させる義務、賃借人は賃料を支払う義務を負います。借りているけれども、賃料を支払う義務を負わない契約(タダで借りる)は、使用貸借契約といいます。
●賃貸人の義務
修繕義務
 賃貸人は賃貸物の使用・収益に必要な修繕をする義務を負います。そして賃貸人が賃貸物の保存に必要な修繕行為を賃借人は拒むことはできません。

費用償還義務
 先に費用について解説します。原状を回復したり、維持したりするのにかかる費用を必要費といいます。この費用以外に有益費というのがあります。これは物の価値を増加させるためにかかった費用です。
 賃借人は必要費を支出したときは、賃貸人にただちに全額を請求できます。賃借人が有益費を支出したときは、賃貸人は賃貸借が終了したときに、目的物の価格の増加が現在ある場合に限って、賃借人の支出した費用か、増価額のいずれかを償還しなければなりません。ただし、賃貸人は有益費の償還について、相当の期限の許与を裁判所に請求することができます。
※期限の許与(きょよ)とは、弁済期を延期する裁判所の許可をいいます。 


 ●賃借人の賃料減額請求権
 賃借人の過失ではないのに、賃借物の一部が滅失した場合は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求できます。
 賃借物の一部が滅失した場合でも、残りの部分のみでは賃借人が目的を達成することができないときは、賃借人は契約を解除することができます。もちろん賃借物が火事や地震などで全焼・全壊した場合も同様です。

●賃借人の義務
 賃借人の義務としては、賃料支払い義務があります。その他に、保管義務、期間満了のときは、返還する義務を負います。


賃借権の譲渡・賃借物の転貸
 賃借人は賃借権を持っていますので、他人に売ることができます。これを賃借権の譲渡といいます。また賃借人は他人に又貸しすることもできます。これを賃借物の転貸といいます。

 物の使い方は丁寧な人もいれば、乱暴な人もいますので、賃借権の譲渡・転貸には賃貸人の承諾が必要になります。また賃貸人に無断で賃借権の譲渡や賃借物の転貸をしたときは、賃貸人は賃貸借に契約を解除することができます。

賃借権の譲渡
賃借物の転貸

●賃借権の譲渡の効果
 賃借権が譲渡されると、従来の賃借人(譲渡人)と新しい賃借人(譲受人)が入れ替わり、賃貸人と新しい賃借人との賃貸借契約が存続することになります。賃貸人は新しい賃借人に対してのみ賃料の請求をすることになります。従来の賃借人が敷金を交付していたときは、従来の賃借人は賃貸借契約関係から離れることから、賃貸人に敷金の返還を求めることができます。

賃借権の譲渡の効果

賃借物の転貸の効果

●賃借物の転貸の効果
 賃借人が又貸しする転貸の場合は、賃借人が転貸人になり、新しい賃借人が転借人となります。賃貸人は賃料の請求を転貸人にも転借人にも請求できます。そして新しい賃借人との間で転貸借契約が成立します。承諾のある転貸借は、転借人が賃貸人に直接義務を負うことにもなります。
 


●賃貸借の解除と転貸借
 賃貸借契約の上に成立する転貸借は、当然、賃貸借契約が消滅すれば、転貸借契約も消滅します。これ以外の事由によって終了した場合のケースはどうでしょうか。
賃借人の債務不履行を理由に賃貸借契約が解除された場合は、賃貸人はこの解除を転貸人に対抗することができます。
賃貸人と賃借人の間で賃貸借契約が合意解除された場合は、特別の事情がない限り、賃貸人はこの解除を転借人に対抗することはできません。
賃借人が賃借権を放棄した場合、これによって賃借権が消滅しても、賃貸人は賃借権の消滅を転借人に対抗することができません。

 
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●賃貸借の終了
 賃貸借が終了するのはどのような場合でしょうか。4つあります。
期間満了のとき、解約申し入れ、賃借物の全部消滅、解除になります。
民法では、賃貸借契約の期間は最長で20年とされています。30年と決めた場合でも、20年になります。期間を定めた場合は、特約がある場合を除いて、賃借人は契約の時期に建物の返還をしなければなりません。中途解約は認められておりません。
期間を定めていない場合の賃貸借契約は、いつでも解約申し入れによって終了させることができます。土地は解約申し入れから1年経てば終了します。建物の場合は3カ月になります。
賃貸借契約期間が満了しても、賃借人がそのまま使い続けている場合、賃貸人が満了を知りながら異議を述べないときは、前の契約と同条件で更新したとみなされます。
賃貸借契約の場合、目的物が火事や地震などで滅失したときは、契約は終了するとされています。
※解約申し入れとは、期間の定めがない賃貸借について、これを終らさせるための意思表示をいいます


●賃借権の対抗力
 不動産の賃借権は 登記をすれば、登記後、不動産の物権を取得した者に対しても、その賃借権を対抗することができます。
賃借権の対抗力

●無断譲渡・無断転貸の禁止
 賃借権の譲渡・転貸は賃貸人の承諾がなければできません。無断で譲渡・転貸した場合、賃貸人と賃借人の信頼関係は失われます。賃貸人は契約を解除することができます。


●敷金
 賃貸借契約が成立すると、賃借人から賃貸人に交付されるのが敷金です。敷金の目的は、将来、賃借人が賃料の不払いなどがあったときの回収です。契約終了によって賃借人が明け渡しのとき、未収賃料などを控除した残額について、賃借人の 敷金返還請求権が発生します。賃借人はまず明け渡すことが先決です。明け渡しと敷金の返還は同時履行の関係とはなりません。
敷金

賃貸人・賃借人が変更の場合
 賃貸人がアパートなどを譲渡し、新賃貸人に変わったとき、敷金返還債務は新賃貸人に承継されます。
 
 賃借人が変わった場合はどうでしょうか。この場合は、敷金返還請求権は原則、新賃借人には承継されません。
 では賃借人が新しい賃貸人に変わったことを知らないでいた場合はどうでしょうか。所有者の移転は合意のみで行うことができますので、賃借人は誰が賃貸人かを知ることができないこともあります。二重払いの危険も出てきます。法律は賃借人の保護の観点から、新賃貸人が賃借人に賃料を請求するには、賃貸借の目的物につき、所有権の登記を備えていなければならないとしています。


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賃貸借契約にはさまざまなトラブルがあります。
部屋を借りて安心に暮らすためにも、事前に確認することが大切です。
次はLESSON46 借地借家法(1) です。