●本登記と仮登記
本登記とは、対抗力のある登記のことです。仮登記とは、将来の本登記の順位を保全することを目的として、あらかじめする登記のことです。対抗力のない登記です。ではなぜ仮登記をおこなうのでしょうか。これは例えば、本登記をしょうと思ったが、登記識別情報のメモなどを紛失して、すぐに提供できないときなどにおこないます。仮登記を行っておくことで、後から本登記をした者に優先することができるからです。仮登記から本登記にあらためることで、仮登記の時点にさかのぼって順位が確保されます。この効力を順位保全効といいます。
例えば、AとBの間で土地の売買契約がおこなわれました。この段階では土地はまだBのものになっていません。Bはまだ本登記できませんので、仮登記を10月10日にしました。
次にAは第三者であるCと土地の売買契約をおこない、Cは10月25日に所有権移転の登記をおこないました。その後、Bは予約完結権を行使して、所有権移転の仮登記を11月10日、本登記にあらためました。この場合、先に10月10日に仮登記をしたBは、Cの本登記は、Bが本登記をした時点で順位が10月10日にさかのぼり、BがCより優先されます。結果的に、C名義の所有権移転の登記は抹消されることになります。
この例のように、Bへの物権変動がまだ生じていない段階でおこなうことができる仮登記を2号仮登記といいます。それに対して、登記識別情報を提供できないなど、物権変動は生じているけれども、手続き上の条件が不完全な場合にする仮登記を1号仮登記といいます。仮登記は原則、共同申請です。例外として、仮登記義務者(ここではA)の承諾がある場合は単独で申請することができます。

土地の分筆・合筆の登記、建物の分割・合併の登記
●土地の分筆・合筆登記
土地登記の記録上、1筆の土地を分割して数筆の土地とすることを、土地の分筆登記と言います。
分筆・合筆の登記は、表題部所有者または所有権の登記名義人以外の者は申請することはできません。しかし1筆の土地の1部が別の地目となり、または地番区域を異にすることとなったときは、申請がないときは職権でおこなうとされています。登記官は申請がない場合であっても、地区を作成するために必要があると認めるときは、表題部所有者または所有権の登記名義人の異議がないときに限って、職権で分筆の登記をすることができます。
合筆の登記とは、登記記録上、数筆の土地を合筆させて1筆の土地にすることです。ではどのような場合に合筆の登記ができないのでしょうか。
◯表題部所有者または所有権の登記名義人が相互に異なる土地の合筆はできません。
◯所有権の登記のある土地と所有権の登記のない土地の合筆はできません。
◯所有者が同一でも、それぞれの土地に所有権以外の異なる権利に関する登記がある場合は、合筆の登記はできません。ただ地役権は土地の一部について成立するものですので、除外されます。合筆する両方の土地に登記原因、登記の日付、目的、受付番号が同一である抵当権、質権、先取特権の登記が設定されている場合は、合筆ができます。さらに信託の登記独特の登記事項が同一の場合も、合筆ができるとされています。
◯接続していない土地の合筆、接続していても地番区域の異なる土地の合筆、地目の異なる土地の合筆はできません。
申請ができる者は分筆の登記と同様です。所有権の登記がある土地の合筆登記の申請について、合筆前のいずれか1筆の土地の所有権の登記名義人の登記識別情報でよいとされています。

●建物の分割・合併の登記
建物の分割の登記とは、建物とその建物の附属建物が1つの登記記録で扱われている場合に、それぞれ別の登記記録に分けることです。ここで注意が必要なのは、土地の分筆の登記とは違い、建物の分割の登記は登記官の職権では行わないことです。あくまで表題部所有者などの申請で行うことです。共同担保目録は提供する必要はありません。(土地の分筆の登記と同様)
建物の合併の登記とは、2つの建物の一方を附属建物として、他方の建物と合わせて1つの建物として登記記録にして扱うことです。合併できないのは、所有者が異なる建物や所有権のある登記の建物の合併登記の申請時に提供する登記識別情報に関しては、いずれか一方でよいことになっています。(土地の合筆の登記と同様)

登記ができる場合とできない場合の違いも試験のポイントです。