宅建士英文タイトル

LESSON56 都市計画法(3)

ここでは開発許可制度について学習します。
毎年出題される重要ポイント分野です。

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●開発許可制度とは

 開発行為を行う場合には、都道府県知事の許可を受けなければならない制度です。開発行為とは、建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいいます。特定工作物は2種類に分けられます。1つは際1種特定工作物、もう1つは第2種特定工作物になります。

第1種特定工作物
コンクリートプラント、アスファルトプラント、クラッシャープラント、危険物の貯蔵または処理に供する工作物
第2種特定工作物
ゴルフ場(面積の広さは関係ありません)、1ha以上の野球場・遊園地・動物園・墓園、その他レジャー施設等、危険物の貯蔵または処理に供する工作物
※1ha=10,000㎡、100m四方の土地を思い浮かべるとイメージしやすい


●開発許可が不要なもの
  都道府県知事の許可が不要なものは

市街化区域で行う1,000㎡未満の開発行為

区域区分が定められていない都市計画区域(非線引き区域)または準都市計画区域で行う3,000㎡未満の開発行為

都市計画区域および準都市計画区域外の区域内で行う1ha未満の開発行為

市街化調整区域、非線引き区域または都市計画区域および準都市計画区域外の区域内で行う農業漁業の用に供する一定の建築物、またはこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為
※農産物、林産物、水産物の加工等に必要な建築物については許可が必要となります。農林漁業用建築物のすべてに許可が不要となるわけではありません

図書館、公民館、変電所、駅舎、その他の鉄道施設等、公益上必要な建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

都市計画事業の施行として行う開発行為

土地区画整理事業、市街地再開発事業または住宅街区整備事業

公有水面埋立法の免許を受けて行う開発行為

非常災害の応急措置として行う開発行為

通常の管理行為または軽易な行為(車庫、物置等)

国、都道府県等の公的機関が行う開発行為についても、開発許可が必要です。ただし、国の機関または都道府県等と都道府県知事との協議が成立したときは、開発許可があったものとみなされます。
開発許可不要表

●開発許可の手続き

 開発許可を申請しょうとする者は、あらかじめ開発行為に関係がある既存の公共施設の管理者と協議し、同意を得なければなりません。
開発行為を申請しょうとする場合
 あらかじめ開発行為または開発行為に関する工事により設置される公共施設(新設される公共施設)を管理することとなる者、その他政令で定める管理予定者と協議しなければなりません。同意までは必要とされません。
図***

●開発行為の申請
 都道府県知事に申請書を提出します。必ず申請書という書面で申請することが必要です。口頭で申請することはできません。
 申請書には開発区域の位置、区域、規模、予定建築物等の用途、設計・工事施工者、着工日、完成予定日などを記載します。また許可申請前の手続きで同意を得たことを証明する書面、協議の経過を示す書面を添付します。
※1ha以上の開発行為に関する設計図書は、資格者(技術者、1級建築士等)が作成した者でなければなりません。
 

開発許可の手続き

●開発許可の基準

 開発許可の基準とは、都道府県知事が許可するかどうかを判断するための基準です。そしてこの基準には2種類あります。1つは一般的許可基準、もう1つは市街化調整区域の基準です。
一般的許可基準(技術基準、33条)
 都道府県知事は開発行為が33条の許可基準に適合しており、適法な手続きを経ている場合は、許可しなければなりません。主なものは下記の通りです。
◯道路、公園等の配置
◯排水施設の構造および能力
◯用途地域等の適合
◯40ha以上の開発行為には、輸送上、その他の見地からする立地条件の適正化
◯1ha以上の開発行為には、樹木の保存、表土の保全措置を講ずること
◯1ha以上の開発行為には、騒音、振動等による環境悪化の防止上、必要な措置を講ずること
◯工事施工者の工事完成能力
◯開発許可申請者の資力および信用

◯開発区域内の土地、工作物等の関係権利者の相当数の同意があること。この場合の開発区域内の土地についての所有権を有している必要はありません。
市街化調整区域の基準(34条)
 市街化調整区域では、建築物の建築または第1種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為は、一般的基準を満たし、さらに34条の許可基準の1つに該当しなければ、都道府県知事は許可をしてはならないとされています。
◯主として開発区域の周辺に居住している者の利用に供する政令で定める公益上必要な建築物またはこれらの者の日常生活に必要な物品の販売、加工、修理その他の業務を営む店舗、事業場などの建築のための開発行為
◯農林漁業用建築物(許可されていないもの)または市街化調整区域内で生産される農林水産物の処理、貯蔵、加工用の建築物などのための開発行為
◯都道府県知事が開発審査会の議決を経て、開発区域の周辺における市街化を促進する恐れがなく、市街化区域内において行うことが困難または著しく不適当と認める開発行為


●許可・不許可
 都道府県知事は、許可申請があった場合、遅滞なく許可または不許可の処分をしなければなりません。文書で通知します。処分に不服がある者は、開発審査会に対して審査請求することができます。
 市街化調整区域など、用途地域が定められていない区域の中で開発行為が行われるときは、建物の建ぺい率、高さ、壁面の位置、その他建築物の敷地、構造、設備に関する制限を、都道府県知事が許可するときに定めることができます。
●開発登録簿
 開発許可がされると、都道府県知事は開発登録簿に一定の事項を登録しなければなりません。そして常時、公衆が縦覧できるように、保管し、請求があったときは、その写しを交付します。
●変更の許可
 開発許可を受けた者は、開発許可の申請書の記載事項の変更をしょうとする場合、原則として都道府県知事の許可を受けなければなりません。ただし、軽微な変更については、遅滞なく都道府県知事に届出をする必要があります。開発許可がいらない場合に変更するときも、変更の許可は必要ありません。
※軽微な変更とは、工事の着工・完成予定の年月日、工事施工者の変更などです
●建築制限
 開発許可を受けて、土地の造成工事などの開発行為を行なっている開発区域内の土地においては、工事完了の公告があるまでは、原則として、建築物を建築し、または特定工作物を建設してはなりません。ただし建築等をして良い場合があります。
◯開発工事用の仮設建築物建築または特定工作物の建設
◯都道府県知事が支障がないと認めたとき
◯開発区域内の土地所有者等で、その開発行為に同意していない者が、その権利の行使として建築物の建築や特定工作物の建設をする場合

●地位の承継
 開発許可を受け、開発行為をしていた者が、途中で死亡した場合、どうなるでしょうか。これは開発許可に基づく地位の承継という問題になります。一般承継と特定承継があります。
一般承継
 開発行為をしていた者が亡くなって、息子が相続して開発を続ける場合、当然として地位を承継します。許可は不要です。これは法人が合併した場合も同じです。
特定承継(特定の財産だけ引き継ぐ)
 土地の所有者が許可を受け開発していて、その土地を売った場合、土地を購入した者が開発を続けるときも、許可は不要です。ただし悪質な開発業者だった場合は困りますから、都道府県知事の承認が必要です。  


●開発行為の廃止
 開発許可を受けた者が、何かの事情により、開発行為をやめた場合、遅滞なく都道府県知事に届け出なければなりません。廃止について知事の承認や許可は不要です。
●工事完了後の届出
 開発許可を受けた者は、開発工事が終了した場合は都道府県知事に届け出なければなりません。都道府県知事は工事完了の届出があった場合は、遅滞なくその工事が開発許可の内容に適合しているかどうかについて検査しなければなりません。そして、検査し、適合していると認めたときは、検査済証を交付しなければなりません。さらに知事は、検査済証を交付したときは、工事を完了した旨を公告しなければなりません。
●公共施設の管理、敷地の帰属
 開発によって道路などの公共施設をつくる場合、公共施設の管理は原則として、市町村が管理することになります。用地も公共施設の管理者に帰属するのが原則です。
●開発許可区域内の建築制限と例外
 開発許可を受けた開発区域内において、工事完了公告後は、原則として、開発許可申請に定めた予定建築物等以外の建築物または特定工作物の新築、新設をすることはできません。また建築物の改築や用途変更をして、予定建築物以外の建築物を建てることはできません。ただし例外があります。下記の場合はできます。
◯都道府県知事が利便の増進上、環境の保全上支障がないと認め、許可した場合
◯用途地域が定められているとき
●開発許可を受けた土地以外の土地の建築等制限と例外
 (市街化調整区域内の建築制限)
 市街化調整区域のうち、開発許可を受けた開発区域以外の区域内では、都道府県知事の許可を受けなければ、建築物の新築、改築、用途変更や第1種特定工作物の新設をすることはできません。ただし例外があります。
◯駅舎、図書館等公益上必要な建築物の新築、改築、これらの用途変更
◯都市計画事業の施行として行う新築、改築、用途変更
◯農林漁業用の一定の建築物および農林漁業者の住宅の新築、改築、これらの用途変更
◯仮設建築物の新築
◯非常災害の応急措置としての新築、改築、用途変更
◯公有水面埋立法による埋立地において行う建築物の新築、改築、用途変更、第1種特定工作物の新設
◯通常の管理行為、軽易な行為
※学校、幼稚園、医療機関、社会福祉施設の建築は知事の許可が必要です
 
 

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開発行為には都道府県知事の許可が必要なときと、不要の場合があることの違いが理解できたでしょうか。
復習と問題集でなんども学習してください。
次はLESSON57 都市計画法(4)からです。