●制限行為能力者の保護者の権限
制限行為能力者の保護者には代理権、同意権、取消権、追認権と、4つの権限があります。それぞれの言葉を解説します。
○代表権制限行為能力者の財産等について、制限行為能力者の代わりに契約する権限です。
○同意権制限行為能力者が契約等するときに、あらかじめ同意をする権限です。
○取消権制限行為能力者が保護者の同意を得ないで契約をした場合は、取り消すことができる権限です。
○追認権制限行為能力者が保護者の同意を得ないで契約をした場合でも、制限行為能力者に有利な契約をした場合、取り消す必要がないときは、保護者は契約を後から有効に確定させることができます。この権限を追認権といいます。
●制限行為能力者と第三者
売主、買主、貸主、借主などを契約の当事者、それ以外の者を第三者といっています。ここからは簡単な例で解説します。
未成年者が法定代理人の同意を得ないで、土地を買主に売ったとします。その契約を取り消す前に、買主は事情を知らない(善意)第三者にその土地を転売し、引き渡し、移転登記も済ませました。この場合、未成年者は土地を取り戻すことができるでしょうか。
制限行為能力者である未成年者は保護されます。つまり土地を取り戻すことができます。法定代理人の同意を得ないで、未成年者が土地を売ったことを知らない第三者は、登記を得ていても、未成年者は取り戻すことができます。

未成年者が法定代理人の同意を得ないで、土地を買主に売ったとします。ここまでは前と同じです。しかし未成年者は契約を取り消しました。その後、買主は事情を知っている(悪意)第三者にその土地を転売し、引き渡し、移転登記も済ませました。この場合、未成年者は土地を取り戻すことができるでしょうか。
この場合、ほとんど前と同じように見えますが、法律的に二重譲渡がおこなわれたのと同様の扱いになります。未成年者は取り消したのですから、買主から土地の権利を復帰させました。しかし買主はすでに土地を第三者に転売していますから、買主は二重譲渡を行なったとみなされます。この場合は、先に登記を備えたほうが権利を取得できます。未成年者は土地を取り戻すことはできません。

まとめますと
○制限行為能力者による契約の取り消しは、取り消し前の善意の第三者にも対抗(主張)することができます。
○取り消し後の第三者については、先に登記を備えたほうが、権利を得ます。制限行為能力者は悪意がある第三者にも対抗できません。取り消し前と取り消し後に注意してください。
※善意と悪意はよく出てきます。善意とは、事情や事実を知らないということ。悪意は事情や事実を知っていることです。法律用語です。
※対抗とは、主張という意味です。
●制限行為能力者と取引の相手方の保護
制限行為能力者である未成年者が、法定代理人の同意を得ずに、もう一方の相手方と不動産物件などの契約をした場合、相手方はいつ取り消されるかわからない状態ですので、不安定な立場であるといえます。これを解消するために、制度が設けられています。
▶︎催告権
制限行為能力者が単独で契約したとき、買主などの相手方は、法定代理人に対して1ヶ月以上の期間の中で、追認するのか、しないのか、はっきりしてくださいと催告することができます。期間内で確答がない場合は、追認または取り消したとみなされます。誰に催告するか、確答がない場合はどうなるかを図にしましたので、確認してください。

▶︎制限行為能力者の詐術
民法では、制限行為能力者が行為能力者であると信じさせるような詐術を用いた場合、その行為を取り消すことができません。例えば、私は行為能力者であるとか、親の同意を得ているといった、ウソをついた場合です。保護するに値しないということです。
※詐術とは、制限行為能力者が自分が行為能力者であることを信じさせたり、保護者の同意を得ているような振る舞いをして、相手方をだます行為です
▶︎取消権の消滅時効
民法では、取消権は追認できるときから5年間行使しないとき、または行為のときから20年経過したときは、時効によって消滅すると規定しています。取消権をいつまでも行使しない者がいると、相手方はいつ取り消されるかわかりませんので、不安定な状態のままになります。それでは困るということです。
※追認できるときとは、未成年者が成年になったとき、または婚姻したとき。成年被後見人、被保佐人、被補助人はその審判が取り消されたときです。

