宅建士英文タイトル

LESSON27 時効(1)

一定の年月が経過することで、権利を取得または消滅させる制度を時効といいます。
ここでは時効制度のひとつ、取得時効について学習します。

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●時効の種類
 時効には取得時効と消滅時効の2種類があります。取得時効とは、一定期間、他人のものかどうかを問わず、占有状態が続いていると、それが自分のものとして、権利を取得してしまう制度です。

 消滅時効とは、一定期間、権利を行使しない状態が続いていると、その権利が消滅してしまう制度です。
 

時効の種類

 ●取得時効
 取得時効は善意・無過失の場合と、悪意かまたは善意・有過失(知らなかったことに落ち度がある)の場合では、所有権取得までの年数が違います。
 取得時効はどのような場合に成立するのでしょうか。
1つ目は、所有の意思を持って、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者が、その占有を始めたとき、その物が他人の物であることを知らず、知らなかったことに落ち度がないときは、10年でその所有権を取得します。では占有したときは善意・無過失だったが、途中で他人のものだと気づいて、悪意になったとします。この場合はどうでしょうか。重要ポイントです。あくまで占有開始時が善意・無過失であれば、取得期間は10年になります。
2つ目は、所有の意思を持って、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者が、その占有を始めたとき、その物が他人の物であることを知っていたか、または知らなかったことにつき落ち度があるときは、20年でその所有権を取得します。

 例えばこの場合はどうでしょうか。
Aの土地を自分の土地として17年間占有したBが、Cにその土地を3年間賃貸したとします。この場合BはAの土地を時効取得できるでしょうか。BはAの土地を自分のものでないことを知っていました。
 ここでのポイントは賃貸した期間が、Bの所有の意思を持った占有にあたるかどうかです。Bは自分の土地として貸していますので、この場合はBの占有が継続していると判断され、合計で20年間占有しているので、Bの取得時効が成立します。

取得時効


●時効取得と登記
 ここで登記の存在を考えてみましょう。登記がなくても、取得時効を対抗できるでしょうか。
○時効取得した者は、時効の完成前の第三者が登記を備えていても、時効取得を対抗できます。第三者が善意でも、悪意でも関係ありません。
○時効取得した者は、時効の完成後の第三者が先に登記を備えると、時効取得を対抗できません。不動産の二重譲渡と同様ととらえ、先に登記を備えた者が権利を持ちます。第三者が善意でも、悪意でも関係ありません。
では具体例で解説します。
元の所有者との関係
 BはAの土地を時効取得しました。Bは登記がなくても、Aに対して時効取得を対抗できます。AはBが時効取得でしたので、権利を失います。AとBは売買契約の売主と買主と同様の当事者の関係だからです。
時効完成前(時効期間満了前)に所有者が代わった場合
 BがAの土地を善意・無過失で占有を開始しました。8年間占有を続けた後、AがCに土地を売却し、所有移転登記も完了しました。売却後もBは2年間占有を続けました。この場合Bは土地の所有権を時効取得し、Cに対抗することができるでしょうか。
 BとCは、時効取得のBと権利を失うCという当事者の関係にあります。BはCに対抗することができます。そしてBは土地を時効取得できます。
時効完成前
時効完成後に所有者が代わった場合
 BはAの土地を10年間占有し、その後数年経って、AはCに土地を売却しました。時効期間が満了しているので、Bは時効の利益を受けられる権利、援用権が発生しています。(援用すればBのものになります)Bは基本的には土地は自分のものです。一方で、CはAから土地を買ったのですから、Cは土地は自分のものであることを主張します。一つの土地をBとCはお互いに権利を主張して争うことになります。判例ではこれを 対抗関係と呼びます。不動産の場合は登記を先に備えたほうが、勝つとしていますので、 BとCのどちらかが先に登記を備えたほうが、土地の所有権を主張できます。
時効完成後

※時効完成後の第三者が背信的悪意者の場合は、時効取得者は登記がなくても権利を取得できます。
 
 

●占有の承継
 民法では、占有を受け継いだ者は、自分の占有期間だけでなく、自分より前の占有者の占有期間もあわせて主張できるとされています。そして、その瑕疵も引き継ぎます。
 具体例で解説します。
例1
 BがAの土地を12年間占有後、 Bが死亡したので、Bを相続したCが8年間占有していました。この場合、Cは8年間しか占有していません。しかしBの占有期間の12年を足すと20年間になり、Cは時効取得できます。
占有例1
例2
 DはAの土地を悪意で8年間占有し、その後、Eは善意・無過失で7年間占有しています。この場合、2通りあります。
 ひとつは、Dは悪意で占有を開始しましたので、Eも瑕疵を受け継いで、悪意の占有者とみなされますので、後5年間が必要になります。よってEは5年後に時効取得できます。
 もうひとつは、Eが自分の占有だけを主張すると、Eは善意・無過失で占有を開始していますので、10年間の時効期間ですから、あと3年間が必要になります。
 このふたつを比べてみると、Eが得するのは、自分の占有のみを主張するほうが、短い期間で時効取得することができます。前の占有を承継するかしないかは、占有者の自由です。
占有2

cowgirl
取得時効が成立すると、自分の土地が知らないうちに他人のものになってしまいます。法律は怖い一面も教えてくれます。次はLESSON28 時効(2)の消滅時効について学習します。