宅建士英文タイトル

LESSON39 債権(2)

お金を借りたら返す。買い物をしたら、お金を払って、物を引き渡してもらう。
日常なにげなくおこなっていることは、法律的には弁済、つまり債務の履行にあたります。
ここでは弁済と相殺について学習します。

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●弁済
 弁済とは簡単にいえば、債務の履行のことです。債務を消滅させる行為の一つです。弁済は基本的に債務者がするものですが、債務者以外の第三者でもすることができます。ただし、第三者の弁済ではダメな場合があります。債権者と債務者の間で、第三者には弁済させないという特約がある場合です。
 また利害関係のない第三者は、債務者の意思に反して弁済できません。民法では、当事者間で取り決めがなければ、債権の目的が特定物の引き渡しの場合、債務者(弁済する者)は引き渡しをすべきときの現状で引き渡さなければなりません。
※特定物とは、取引の目的物として、当事者が物の個性に着目した物をいいます。例えば、自動車ならどれでもよいというのではなく、ベンツCクラスなど特定できる自動車をいいます。
 特定物の引き渡しは、契約したときにその物が存在した場所で、それ以外の物については、弁済のときの債権者の住所で引き渡します。

債権消滅

●第三者の弁済
 債務者以外の第三者であっても、債務の弁済はできます。民法では、債務の弁済は債務者の代わりに第三者が弁済することができます。ただし、第三者の弁済を許さない特約や、債務の性質が許さないときは、第三者の弁済はできません。また、利害関係のない第三者は、債務者の意思に反して弁済はできません。
※利害関係のある第三者とは、法律上の利害関係を有する第三者、物上保証人、担保不動産の第三取得者をいいます。単なる親族関係の兄弟・姉妹等はあてはまりません。

●弁済による代位
 債務者に代わって債務を弁済した者は、債務者に対して弁済した分の求償ができます。求償権を確保するため、その範囲内で債権者の権利が弁済した者に移転することを弁済の代位といいます。法廷代位と任意代位の2種類あります。
 弁済をすることで、正当な利益を有する者、保証人、物上保証人、連帯保証人等は弁済によって当然債権者に代位します。これを法廷代位といいます。
 弁済をすることに正当な利益を有しない者は、債務者のために弁済したときは、弁済と同時に債権者の承諾を得て債権者に代位することができます。これを任意代位といいます。この場合は、通知または承諾がなければ債務者に対抗できません。そして第三者に対抗するには、確定日付のある証書による通知または承諾がなければなりません。まとめると、法廷代位の場合は、代位のために債権者の承諾は不要であり、任意代位の場合は、債権者の承諾が必要となります。重要ポイントです。

●受取証書の持参人に対する弁済
 債権者やその代理人が弁済を受ければ、当然、債権は消滅しますが、債権者など以外の者に行った弁済が有効となる場合があります。領収書など受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるとみなされます。弁済者が善意無過失であれば、弁済は有効であるとされています。
 債権の準占有者に対する弁済も、弁済者が善意無過失であれば有効です。ここで債権の準占有者とは、債権者らしい外観を有する者をいいます。外観は債権者らしいが、実際は債権者でない者のことです。他人の預金通帳と印鑑の所持人、借用証書の持参人などです。民法では、債権の準占有者に対してした弁済を有効と扱い、弁済者の保護を図っています。


●弁済の充当
 債務者が同一の債権者に複数の債務を負っている場合、債務者が弁済したものが、債務全体を消滅させることができないとき、どの債務に弁済を充てるのかを指定することです。


●相殺
 簡単にいうと、貸し借り、損得などをお互いに消しあってゼロにすることをいいます。法的にいいますと、二人がお互いに同種の債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるとき、一方の意思表示によって対当額について債務を免れることです。
 例えば、AがBに300万円の貸金債権を持っていて、BはAに250万円の代金債権を持っているとします。AとBはそれぞれ弁済・受領を繰り返すことは時間・費用がかかるので、もっと効率的に処理することがお互いにとって良いと思われます。そこでAはBに対して、お互いの債権を対等額である250万円について相殺することができます。相殺後はAはBに対して、50万円の債権を持つことになります。相殺の意思表示をするAの有する債権を自働債権といい、相殺の意思表示を受けるBの有する債権を受働債権といいます。

相殺

 ●相殺の要件
 相殺するためには、相殺できる状態でなければなりません。相殺できる状態のことを相殺適状といいます。具体的に解説します。

○当事者間に対立する債権があること
○それぞれの債権が有効であること
ただし、時効成立した債権でも、時効完成前に相殺適状になっていれば、相殺することができます
○それぞれの債権が同種の目的であること
○双方の債権が弁済期にあること
ただし、自働債権の弁済期にあれば、受働債権の弁済期が到来していなくても、相殺できます
○相殺が許される債権であること
自働債権に抗弁権が付いているときは相殺できません

 
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相殺が禁じられている場合
 相殺適状であっても、相殺できない場合があります。当事者間に相殺禁止の特約があるとき、法律で禁止されているときはできません。
○不法行為によって生じた債権を受働債権として相殺することはできません。
○ 自働債権が受働債権の差押え後に取得された債権である場合、差押えの実効性を確保するために相殺が禁じられています。逆に自働債権が受働債権の差押え前に取得された債権の場合は、相殺ができます。


●相殺の方法と効力
 相殺は当事者の一方から相手方に対して、相殺の意思表示がなされ、その効力は相殺適状になったときにさかのぼって生じます。相手方が相殺について承諾することは不要です。相殺の意思表示には、条件や期限をつけることはできません。相殺には遡及効が認められているからです。
※遡及効とは、法律の効力が、その施行前にさかのぼって発生すること、または法律要件の効力が、その成立前にさかのぼって発生すること


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弁済は非常に単純な行為に見えますが、これにみんな苦労しています。
相殺もよく聞く言葉ですが、なかなか相殺するものがありません。
次はLESSON40 契約の成立です。